医療事務として『レセプト業務』は最も責任ある仕事内容です。
レセプトをきちんと理解して、正しく請求できるようになりましょう。
まずは初心者でも分かりやすいようにレセプトの超基本の流れを説明していきます。
病院の収益は患者さんの窓口分だけなの?
結論からいうと、病院の収益は、患者さんが支払う自己負担分だけではありません。
例えば、50歳の自己負担3割負担の患者さんの医療費をみていきましょう。
となります。
医療機関の収益は、毎日の患者さんからの支払い+レセプト請求による診療報酬によって成り立っています。
レセプトの語源
レセプトの語源は、オランダ語のrecept(処方)やドイツ語のRezept(処方)からきています。
ドイツ語での発音は「レツェプト」といいます。
日本でいう「レセプト」とは、医療保険の診療報酬明細書のことです。
医療現場では、レセプトのことを『レセ』と略して言われることが多いです。
「今日からレセ点検」「あのレセどうなりましたか?」「レセ終わった?」などですね。
『レセ』=「レセプト」と覚えておきましょう!
では「レセプト」とは何か?
では、「レセプト」とはどういうものでしょうか?
「レセプト」とは、医師が患者さんへの診察行為を診療報酬点数表から算定し、患者さん毎にまとめた請求書のことです。
診療行為とか診療報酬点数表とか算定とか……ちょっと難しかったですかね?!
では、ものすご~~く簡単に説明すると、「レセプト」=「一人の患者さんの検査や処置の内容を一か月分にまとめた請求書」ということになります。
ここでいう一か月分とは、毎月1日~月末までの期間になります。
レセプト請求とは?
レセプト請求とは、毎月1日~月末までのひと月分をまとめて、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会に請求することです。
医療事務にとって最も責任ある仕事内容がこの『レセプト業務』となります。
正しいレセプト作成をし、正しいレセプト請求をすることで、医療機関に診療報酬が支払われます。
逆を言えば、正しいレセプト作成がされていないと、査定や減点、または返戻(レセプトを戻されること)があり、医師が患者さんへの診療行為に対して診療報酬が正しく支払われないことになります。
もっと分かりやすくいうと、
このように、医師は毎日患者さんに対して診療行為を行っています。
医療事務は、その診療行為を毎日計算し患者さんに自己負担分を請求しています。
そして、月末まで終わると、その1か月分の診療行為をまとめたレセプトを審査機関に提出します。
そのレセプトの内容が不十分・不適切であれば、内容の一部を削られたり、請求書を返却されたりします。そうすると、その分の診療報酬は医療機関に振り込まれないことになります。
医療事務として、『レセプト業務』とは医療機関にとって最も責任のある業務になることが理解できますね。
Question1 レセプト枚数どうなる?
では、ここで問題です。
1枚1枚出すのめんどくさいから、まとめて出しちゃったほうがいいんじゃない?と思いましたか?
それで大丈夫ですか? レセプトの1か月単位とは毎月1日~月末までですよ。
これはすぐ分かりましたか?! この問題はとても簡単でしたね。
そうですね。5月分のレセプトと6月分のレセプトを請求する必要があります。
1枚1枚出すのめんどくさいから、まとめて出しちゃったほうがいいんじゃない?と思っても、それは許されませんね。きちんと2か月にわたってレセプトを2枚提出しましょう。
レセプトってどうやって請求するの
レセプト請求が医療事務として大切なのはわかっていただけたと思いますが、では、レセプトとはどうやって作成していくのでしょうか?
野菜の値段がスーパーによって違うように、病院によって医療費の金額が違うと思いますか?
それは、No!です。
診療費の計算は『診療報酬請求点数表』に準じて、どの病院も算定しています。
診療報酬点数表とは、いわゆる『レセプトの計算表』『レセプト計算の教科書』ですね。
とても分厚い本で、小さな文字でたくさんの情報が詰め込まれています。
医療事務はこの点数表から、医師が患者さんに対して行った診療行為の点数を探し出し、点数表のルールに沿って算定していきます。
ちなみに、診療報酬点数というのは、点数ですので金額が書いてあるわけではありません。
Question2 点数って何円?
では、ここでまた問題を出しますね。みなさん分かるでしょうか?
ヒントはこちらです。
病院に受診したときだいたいどれくらいの料金支払っているか覚えていますか?
初診で受診したときに支払っている料金の中には初診料が入っていますよ。
答えは、診療報酬の1点とは、10円で計算されます。
初診で病院に受診したときにかかる初診料は、3割負担で860円かかっていることになりますね。
診療報酬の仕組みや点数を知ることで、自分が医療機関に受診したときも、ある程度どれくらい医療費がかかるのか見当が付くようになりますよ。
レセプト請求の流れ
それでは、ここから簡単なレセプト請求の流れを説明していきます。
それでは、ひとつひとつ説明していきますね。
1. 医師による患者さんへの診療 【毎日の業務】
医師は患者さんの病気に対して、診療行為や処方などを行います。
その診療行為や処方に対して適切な病名が付いているかなどの確認を行います。
診療行為や処方薬に対して適切な病名がなかった場合は医師に確認し、病名追加を行ってもらいます。
2. 医療事務による診療報酬の計算 【毎日の業務】
医師が患者さんへ行った診療行為や処方薬をカルテより抜き取り、診療報酬点数表より算定していきます。
ほとんどの医療機関でレセプトコンピュータ(レセコン)の導入がありますので、レセコンに入力すると患者さんへの領収書や処方箋は印刷することが出来ます。
電子カルテの医療機関であれば、電子カルテで算定した情報をレセコンに情報を飛ばすことができます。
レセコンは自動算定する機能などもあり、算定は手計算することもなくとても簡単ですね。
ただし、自動入力だからといって、全く確認せずにレセコン入力するのは良くありません。
患者さんは、あなたが算定した請求金額の自己負担分を病院に支払って帰ります。
患者さんへの請求前に確実にデータ点検を行い、診療報酬の計算を正確に行いましょう。
診療点数の中には、1月に1回のみの算定や診療科により定められたルールなどもありますので、毎日の診療報酬の計算は慎重に行っていきましょう。
3. レセプトの作成・出力・点検作業 【1日~10日まで】
月末が終わったら、レセプト作成・出力・点検作業を行います。
もちろん①②の毎日の業務を行いながらのレセプト点検になりますので、医療事務は月初めが若干忙しくなりますね。
ただし、①②の毎日の業務をしっかり行っておくことで、③のレセプト点検は格段に楽になります。
レセプトには患者さんの氏名や性別、保険情報なども記載されます。
これも毎日の保険証登録を正しく行うことで月初めの点検作業は楽になり、返戻(レセプトを返却されること)も少なくなります。
毎日の保険証登録や適応病名登録・診療報酬の算定をしっかり正しく行い、レセプト点検も業務時間内に終わらせる努力をしましょう。
レセプト期間中は絶対残業だ……なんて必要はありません!!!
私のクリニックでは、必ず業務時間内にレセプト点検を行えるように①②の作業を怠りません。
その成果もあり、レセプトによる残業はゼロです。
4. 保険者(国保連合会・支払基金)へレセプト提出 【毎月10日締め切り】
レセプトの締め切りは10日必着です。
国保連合会・支払基金それぞれに分けてレセプトの提出を行います。
現在は、電子レセプトで提出する医療機関が大半になっています。
約60%がオンライン請求、約30%が電子媒体(CDやフロッピーディスク)の電子レセプトによる請求を行っています。
10日までに国保連合会・支払基金にレセプト提出することで、それぞれの機関により厳重な審査が行われます。
審査は、国保連合会・支払基金で行われた後に、保険者でも審査が行われます。
レセプトの記載もれや記載誤り、点数計算の確認だけでなく、請求内容の医学的な妥当性についても確認されます。
その結果、医療機関に診療報酬の支払いが行われます。支払いの時期は診療行為を行った月の翌々月の20日頃になります。
レセプト超初級入門編のまとめ
レセプトとは、患者さんが窓口に支払った分以外の診療報酬をまとめる請求書のことです。
このレセプト請求をしっかり行わないことには、病院に診療報酬が振り込まれることがありません。
レセプトの仕組みや重要性、診療報酬点数やレセプトの流れなどを分かりやすく説明してきました。
医療事務にとって、レセプト業務が大切なことがお分かりいただけましたでしょうか?
正しいレセプトを正しく請求することで医療機関の収益に繋がります。
レセプト請求業務は、医療機関の収益を支えるとても大切な仕事ですね。
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